コラボレーションが新たなエンターテイメントを生む

 

久しぶりの更新になります。

前回、新人や無名でも実力のあるアーティストが活躍できる仕組みを考える事も音楽業界の課題だと書きました。今回はその事について考察したいのですが、その前にしばらくお休みしていた間に色々と大きな動きがありましたね。まずは期待していたiCloudのiTunes Match。アメリカでは昨年11月にようやくスタートしましたが、日本ではサービスが見送られることになりました。アクトビラやMYUTA事件などの過去の判例の懸念から見送られる事になったと聞き残念です。そしてSpotifyのプラットフォーム戦略。API公開によりサードパーティーのアプリをSpotify上で利用できるようになったようです。Billboardのヒットチャートやニュース、今の気分に合わせたプレイリストの作成、Turntable.fmのようにリアルタイムで同じ音楽を視聴・共有できるようになったりと音楽の新しい楽しみ方に対応・提案され始めてきました。

 

あとはFacebookの新機能。自分の年表を作成しよりコミュニケーションを助けてくれる「タイムライン」と、ライフスタイルやエンタテイメントなどのパーソナルな情報をより簡単に共有する事で新たな体験を生み出す「ソーシャルアプリ」。日本でもいよいよスタートしましたね。今後パーソナルな情報が親しい間柄の人たちと共有されることが加速し、それが当たり前になった上で新たな体験や価値、利便性などを提供するサービスが生まれてくるのではないでしょうか。

 

 

シェアビジネスの浸透

 

そして共有=シェアされるのは情報やデジタルなものだけではなく、物質的な製品または目には見えにくいサービスもあります。国内でもこのようなシェア系サービスが立ち上がり、昨年7月にはSHAREカンファレンス2011が開催されるなど“コラボ消費”というシェアビジネスが浸透し始めているのを感じさせられました。大量生産・大量消費社会が様々な問題を生み行き詰まりを見せ、所有から共有・利用へ人の意識が変化する中で、これから人は何に価値を見出すようになり、現在のビジネスにどのような影響を与えていくのか考えさせられました。

 

代表的なシェア系サービスとしてよく取り上げられるのが、Airbnb(エアービーアンドビー)です。

Airbnb

 

WEBで泊まる場所が必要な旅行者と、余った部屋を貸したい人(ホスト)とのマッチングを行うサービスです。

 

コラボ消費には複数のモデルや成立のための原則がありますが、注目しているのが「コラボ的ライフスタイル」と「他者との信頼」です。Airbnbは一度残念な事件が起こったりもしましたが、Facebookアカウントの連携や利用者のレビュー、メッセージでのインタラクティブなやり取りによって、ホストと旅行者がお互いどのような人物か信頼性を証明し可視化できる仕組みになっています。そうして自分の好きなタイミングで余った部屋(空間)を貸し借りができるわけです。時間や空間・スキルなどを共通の目的を持つ人たちが集まり、お互いを信頼する上で成り立つ。そして人と人とのつながりから社会的な関係が作られコミュニティが生まれます。

 

メジャーの課題はインディーズの課題でもある

 

さて、前回の所有からアクセスへ~新たな音楽体験が必要ないま~では、CDのみに依存するビジネスモデルでは限界があり音楽配信、権利を押さえた上で無料で音楽を楽しむ層をどう積極層に変えていくか、例としてストリーミング音楽配信をあげました。そしてソーシャルだけでなくメディアニュートラルでユーザーとコミュニケーションを行うこと、リアルな場であるライブ、イベントへの誘引と持続性を持つこと。共有してもらうこと(コンテンツを作ってもらうこと)で、自分ごと化させつながり続けることで徐々に好意度を形成していくことが重要です。そのためにはやはりユーザーが何を求めているかを考えることです。ここまでトータルに考えプランニングする事が音楽業界の課題として述べましたが、これはメジャーに限らずインディーズにとっても言えることです。

 

インターネットが普及してMyspaceなどの音楽SNSが登場した頃から、音楽業界ではメジャーとインディーズの境界がなくなった、なんて言われたりしていました。確かに自分たちで無料でホームページを作れたり、音源を公開し視聴できたりなど情報発信が以前より容易になったためそう言われますが、大きく違う点があります。それはブランディングです。メジャーでは事務所に所属しレコード会社とも契約することで、大きなバックアップが得られます。そこには様々なプロやスタッフが関わっていて、外にはマスメディア、広告代理店、販売店、イベンターなどなど多くの人たちの協力・支援と共にアーティストは成長しそのブランドが作られていきます。ブランドという言い方をすると抵抗を持たれる方もいられるかもしれませんが、楽曲だけでなくそのアーティストにどんな魅力があるのか、それを確立しそのアーティストについて何も知らない人にも分かりやすく伝えていく事は重要です。人気のあるアーティストは自分たちがやりたい事だけじゃなく、自分たちの武器は何か=どうすればファンが喜んでくれるかも分かっていますし、どうすればもっと良いものにできるか常に考えていると思います。ライブでもその場にいるファンまたはお客さんと楽しい・一体感のある時間を作ろうとし、それが演奏・トーク・パフォーマンスなどで伝わるから心が動かされるのではないでしょうか。とはいえメジャーも上記のように新たな課題に直面しニーズの変化に合わせてどうブランディングしていくか問われています。

 

さてアーティストのブランドをどう作っていくかですが、まずどんな人たちに楽曲を、アーティストの魅力を伝えて行くのかを押さえる事が重要です。このブログでも何度もお伝えしていますが、情報洪水の現在ではもはやマスだけの一方通行なコミュニケーション(プロモーション)ではスルーされるだけになります。ソーシャルメディアはもちろんの事、様々なコミュニケーション・チャネルを活用すべきです。色々ありますが音楽の楽しみ方の変化も押さえておかねばなりません。それは前回のエントリーでも触れましたが、動画サイトの利用実態にみられるように映像コンテンツの重要性もそうです。音楽はもはや映像として楽しまれているとも言えます。良い楽曲を作るだけでなく、どうアーティストの魅力を伝えていくか、そのためには“音楽”だけでなくどう“コンテンツ”を作っていくかが重要になります。そしてコンテンツをどのメディアに、どのような形でユーザーに届け、共感してもらい好意を形成しファンになってもらうか。戦略を考えねばなりません。

 

とは言え様々なバックアップを得られるメジャーアーティストならともかく、無名なインディーズアーティストが楽曲の制作、練習、ファンとのコミュニケーション以外にこれらの事を全て実行するにはかなりの労力が必要になります。収入を得るために仕事もありますしね。よくネットならファンに直販できるからレコード会社やレーベルなどは不要だと言われたりもしますが、これらのコストをアーティスト自身でまかなえる場合、もしくは代行してもらえる場合に限るのではないかと思います。大手のレコード会社・事務所に所属していたけれども独立し自身のサイトでファンに直販を行っている方もいますが、それはファンの数などある程度の規模を確立したから可能だと思います。ではそうではないアーティストはどうすればいいのか?その課題を解決するサービスの構想をおおまかにですが次に述べてみたいと思います。

 

 

コラボレーション(協働)が新たなエンターテイメントを生む

 

まずコンテンツを作るという課題の解決です。映像コンテンツだとYouTubeやニコニコ動画でアップロードされた動画が話題になり、何百万回も再生されたりプロとしてデビューし、CD化される事もあります。そうした動画はズバ抜けた技術や魅力、ギャップ、驚きなどインパクトや視聴者の目を引き途中で離脱させないクオリティの高さがあると思います。そんなコンテンツを作るには音楽(演奏)以外のスキルも必要になります。そしてそのスキルが足りないのなら持っている方とシェア(コラボ)しましょう。

 

 

サービス

このサービスはアーティストの音楽・アーティスト自身の魅力を伝えるためのコンテンツを作り、それをユーザーに届けることを目的とします。今回はその中でも映像コンテンツの制作に焦点をあてています。

 

<課題>アーティストが映像コンテンツ制作のために映像クリエイターとコラボしたい。

 

さてスキルを持っていないからコラボすれば良いとは言っても、スキルを持った人、例えば映像クリエイターが簡単に見つかる訳ではなく見つかってもすぐには応じてはくれないかもしれません。それは相手が自分(アーティスト側)の事を実績も含めよく知らなかったり信頼できるのかどうかも分からないからでしょう。ここは現在のシェア系サービスのようにfacebookアカウントでログインできお互いの信頼性を可視化・証明できるシステムと、アーティストと映像クリエイターがコミュニケーションできるクローズドな場を用意することが必要になります。そしてお互いにどんな人物で何が好きで何に影響をうけたか、どんな実績があるのかなどをコミュニケーションの中で知ることができる。そして大切なのはそのアーティストがどんなビジョンを持っていてどんなユーザーにどんな音楽を伝えていきたいのか、ターゲットとポジションを明確にしてそれを伝えることです。そこに映像クリエイターが共感してくれれば一緒にコンテンツを制作するためのコラボレーションが行われることになるのではないでしょうか。

 

このサービスを一言でいうと既存のシェア系サービスのアーティストとクリエイター版になります。情報の検索、比較検討、共有が進みサービスも進化する中で、このような必要とする人材・スキルとの出会いを最適化するマッチング、コラボレーション系のサービスは増えてくるのではないかと思っています。

 

メジャーアーティストも一つの作品をリリースするのに多くのスタッフが関わっています。たとえば映像・写真などでは映像監督、ディレクター、カメラマン、照明、ヘアメイク、スタイリスト、場合によってはダンサー、イラストレーターやアニメーターなど様々なプロの協力によって制作されています。アーティストの課題によって必要なクリエイター・表現者を見つけ、信頼と共感から同じ目的意識を持ってコンテンツ制作に取り組むことはお互いへの関与度も大きくなり、アーティストとクリエイターそれぞれに共感・好感を持つ人たちを取り込むことができ、小さくともタイアップのような相乗効果もあるのではないでしょうか。

 

僕自身も共通の目的意識を持つ(共感でき共有ができる)人たちとのつながりが、新たなムーブメントや大きくなくても新たな変化を起こしていくパワーと可能性を強く感じています。

 

 

価格

悩ましいのが価格設定ですね。WEBサービスはフリーのイメージが強いですが、ここは最低価格を設定した上で、クリエイターが提示する金額をアーティストが支払うという形が良いかと思います(もちろんその逆もありえます)。そしてサービス提供者は手数料をそこから頂くという形です。ユーザーのコラボの増加と人気・実績も高まってくれば価格帯に幅も出せます。

 

 

チャネル・コミュニケーション(プロモーション)

このサービスはアーティストとクリエイターのコラボレーションを促進しお互いの魅力を伝えるコンテンツを作り、ユーザーに届ける事が目的です。ですのでこのサービス上でコラボによって制作されたコンテンツの公開(視聴・閲覧)、ランキング、販売も可能としながら、You Tube、ニコニコ動画など他のサービス上での公開や販売も可能となります。

 

この辺りで注目すべきサービスとしてはGoogle Musicですね。昨年11月に正式公開され様々な機能が発表されました。現在はアメリカだけですがインディーズアーティストがArtist Hubというサービスで自分のアーティストページを作り楽曲の販売を行えるようになりました。国内ではiTunes、Amazon、レコチョク、music.jp、dwangoでも手続きを踏めばインディーズ音源のPC配信・着うた配信も可能ですし、代行しまとめてディストリビューションしてくれるサービスも存在します。また1/5にアーティスト支援サイト「フリクル」がiTunes、Amazon等での楽曲配信サービスがスタートしました。フリクルはメジャーデビューを果たしたバンド「メリディアンローグ」のドラマー海保けんたろーさんが株式会社ワールドスケープを起業しスタートされたサービスです。実力・人気のあるアーティストが音楽活動で収入を得られるように音楽業界の課題解決に真剣に取り組まれています。また昨年9月には株式会社GNTのグループ会社ICJがSpotifyとの提携を発表し、Spotifyで国内の音源が配信可能になりました。

プレスリリース(PDF)

 

このように販売チャネルやプロモーションに有効な大きなサービスも多いですが、本サービスの目的は上記の通りです。コラボレーション促進のためにYou Tube、ニコニコ動画での再生回数が本サービス上で一目で分かるようにし、過去にそのアーティストがどんなクリエイターとコラボしたのか、どれだけtwitter、facebook、Google+などで共有されたのか評価や実績を可視化し、新たにコラボする相手を探す時に判断しやすいように設計します。

 

そして肝心のブランディングについてですが、コンテンツを作るのはアーティスト、クリエイターの魅力を伝えること。つまり共感・好感を持ってもらい自分ごと化させるためです。だからどんな人たちに届けたいのか、どうすれば興味を持ってもらいやすいかを考えた上でメディアを活用する必要があります。映像ならYou Tube、ニコニコ動画なのか、写真・イラストならInstagram、pixivなのか、どのメディアなら効果的に届けられるか広く共有されていくのか。ファンまたはターゲットとするユーザーが何を好み何を求めているのか、コンテンツを作る際にも徹底的に考える必要がありますね。それが分からなければライブの際などのアンケートやじっさいに直接聞いてみたり、ソーシャルメディア上でのコミュニケーションの中で聞いてみるのもいいと思います。アーティストのどこが好きでどこに共感しているのか今後何を求めているのか、それらを反映したり制作の過程を公開したり、一部の優良なファンを制作への参加に促すのも良いと思います。

 

自分ごと化させファンになってもらう、ライブに来てもらう、マネタイズの仕組みを考えるのは難しいですね。ここは戦略を練れる人材がどうしても必要になります。このサービスでそんな方たちとのコラボ(マッチング)も行えればいいなと思います。もしくはサービスの一つとしてコンサルティングを行うのもいいですね。

 

 

最後に

 

さて音楽業界の、インディーズアーティストの課題解決のために、新しいサービスの構想をおおまかに述べてみましたが、インディーズアーティストがどれくらいおり、どれだけの人がこのサービスを利用してもらえるかは定量的には分析していません。すみません…

 

ただコンテンツの多様化、消費、音楽の楽しみ方が変化しているのは間違いなく、それに対応していかなければならないのです。そうでなければ音楽業界の縮小は進み続け、新たなアーティストが活躍する機会も減っていくばかりです。決して音楽が聴かれなくなったわけではなく、ライブへの動員数は2010年も微増しています。また海外で通用する日本の文化・コンテンツもあります。アーティスト・クリエイターがちゃんと利益を得られ新たな活動につなげるにはどんなサービスが必要か考えてみました。

 

テキストのみなのでイメージしづらい部分があれば申し訳ありませんが、ここまで読んで頂いた方はこのようなサービスはどう思われるでしょうか?ご意見・ご感想などございました是非ともコメント頂けると嬉しいです。

 

itomasahiro

1980年生まれ。レコード会社にて営業・宣伝を担当。 縮小し続ける音楽業界と情報化社会の現在、変化してゆくコミュニケーションとライフスタイルから新たな音楽ビジネスを模索しています。

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